給湯流茶道

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【ミュージカル・茶会レポ】リアル結婚式場でカオスぶち挙げ♡給湯流侘びミュージカル@雅叙園レポート(写真文/小林沙友里さん)

目黒雅叙園で狂言ミュージカルと茶会......近ごろ家元自身の関心事である「婚活」をしばしばテーマに掲げてきた給湯流茶道だが、いよいよ極まってきた感がある。かくいう筆者も絶賛婚活中。でありながらその行方は知れず、あの雅叙園に行く機会なんてこれを逃したらもうないかもしれない。という思いで大安の2018年85日、会場と聞いていた園内の「百段階段」へいそいそと駆けつけた。

 

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そしてたどり着いたのが......なにこれ、結婚までの遠い道のりってこと?と思いきや、これがむしろ縁起が良いという「百段階段」だった。百は「完全」を意味するが、「月は満ちると欠ける」と詠まれたように、盛者必衰、諸行無常。完全な状態は長く続かないということから、あえてひとつひいて99段にしたとか。また、陽の数である奇数のなかで最上の9を重ねて99段にしたとか。さすが日本初といわれる由緒ある総合結婚式場験担ぎにもぬかりはない

 

さて、1935(昭和10)年に建てられたこの「百段階段」と階段沿いにつくられた7つの宴会場の一部は都の登録有形文化財床柱や天井、壁面、ガラス窓にいたるまで贅を凝らした装飾が施されているのだが、ちょうどこの時期は「和のあかり×百段階段2018」が開催中で、各部屋で職人アーティストらによるイルミネーションが展開され一層華やかな空間となっていた。

 

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彩色木彫と日本画に囲まれた絢爛豪華な「漁樵の間」では、青森ねぶた職人が竹取物語を表現。

 

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天井や欄間の四季草花絵が見事な「草丘の間」では、インスタレーションアート集団「ミラーボーラー」がかんざし作家、こぎん刺し作家とコラボ。

 


 

しかし、そうしたきらびやかな世界を尻目に、「侘び」を追求するのが給湯流である。今回の舞台は階段の踊り場。ローマのコロッセオよろしく件の階段を活用した客席に客人たちが通され、家元・谷田半休のあいさつで狂言ミュージカルが開幕した。

 

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フィ〜フィ〜フィ、フィ〜フィ〜フィ、ファ〜♪ 和装の結婚式でおなじみの「越天楽」を給湯流雅楽部の佐藤昇給(龍笛)と音無有休(笙)が奏でると、踊り場と階段も一気に結婚式場らしきムードに。と、そこに、「あぁいそがしや、いそがしや」と給湯流狂言部の河田全休が登場。「雅楽の演奏はやめなされませ。本日は新郎様のたってのお申し出により雅楽の演奏は中止となり申した」と言う。

 

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この狂言ミュージカルは二夜連続公演で、4日には千代田区にある3331 Arts Chiyoda日譚が披露されていた。結婚相談所「キュートー・ブルー・マリッジ・サービス」の相談員である河田全休は、箱入り娘の女性・花子(詩吟部の石橋振休)と、やはり箱入りの息子だという男性・太郎(雅楽部の水谷不定休)をくっつけようとするが、「年収3000万円以上の男性がいい」「母上と同居してくれる女性がいい」「おしぼりで顔を拭く男性はいやだ」「掃除をしてくれる女性がいい」といった条件が合わず、うまくいかない。花子がおもむろに「ルンバ買え〜あんたの稼ぎで〜ルンバ買え〜ぇ〜」と吟じると、太郎は龍笛を吹きながら逃げ去り、再び花子が「ふざけんな〜一人のほうが〜コスパいい〜」と立ち去り、河田が「明日からお一人様相談所にするでござる」と言って終了、というのが前編だった。

 

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そうして迎えた後編では、河田が総合結婚式場「給湯園」の新人スタッフに。先ほどは最近流行りのオンリーワン結婚式をしようという新郎への対応に追われていたのだ。そこへ純白のドレスを着て、「この人で〜いいかわからず〜今日になる〜マリッジブルーの挙式当日〜」と吟じながら登場したのは、なんだかんだで太郎とくっついたらしい(!)花子。結局、ルンバを買ってくれない、雅楽の演奏を止めたくせにアンプが壊れてギター演奏ができないという太郎に、「ふざけんな〜オンリーワンに〜ならなくていい〜、デフォルト〜デフォルト〜お前の個性〜生産性ない〜」とブチ切れ、破局。そして新婦を慰め励ます河田の慈悲深い言葉に心を打たれたと結婚を迫り、河田もまんざらではないかんじで、ハッピーエンド......? 雅楽の二人が再び現れ、こんどは琵琶と笙でよりアブストラクトに「越天楽」を演奏。もやっとしたエンディングにかぶせた。

 

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実は今回の狂言ミュージカル、元ネタは給湯流・某メンバーが実際に体験した婚約破棄の話だった(合掌)。そして家元・谷田半休は、それに近しいと言っても過言ではない失恋をしたばかりだという(再び合掌)。おそらくそれゆえに、いつも以上の情熱が加わり、この狂言×詩吟×雅楽@雅叙園という前代未聞の激アツなカオスを生み得たのだろう。その様には一抹のカタルシスすら感じられた。

 

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宴はまだ終わらない。石橋振休が使用する予定だったブーケと、ブライダルコンシェルジュからの手紙、そしてその後ろに重ねた『東洋経済』の表紙(特集は「40代から考える老後資金」)を掛け軸に、茶会が行われた。

 

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客人たちは踊り場に移動し、狂言ミュージカルの感想を語り合いながら、また給湯流の茶碗コレクションを鑑賞しながら一服を愉しんだ。名物・石油系茶碗の一つには、『マッハGoGoGo』の天才レーサー三船剛とガールフレンドの志村ミチが仲睦まじく寄り添う様子が描かれてい

 

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縁起のいい場所で縁起のいいものを見れたのだから、ぜひともあやかりたいところである(また合掌)。

 

 



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