給湯流茶道

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デイリーポータルZに掲載されました

拝啓

残業時に、同僚が出張先で買ってきたご当地きっとカットをもらい食べていると

ほかの同僚が買いすぎたマクドナルドのハンバーガーをくれ

抹茶ならぬ黒ウーロン茶を買いにダッシュする昨今、

 

みなさまにおかれましては

ますますご清栄のことと存じ上げます。

 

そういえば利休はウーロン茶って飲んだことあったのでしょうか。

 

さて、幣給湯流は

デイリーポータルZに取材いただくという

輝かしい恩恵をいただきました。

 

nifty.JPG


家元(仮)へのコメント、衝撃の結末が

黒茶碗のごとく宇宙をひろげてくれます。

 

ぜひご覧ください!

 

http://portal.nifty.com/2010/09/22/c/

 




以下、転載==========


給湯室でする現代版茶道


給湯室でのお茶会に呼ばれました。せまい。

友人の友人の友人からお茶会のお誘いを受けた。

指定された場所は、とある会社の給湯室。

お茶会に呼んでくれたのは、給湯室で茶道をする「給湯流茶道」の家元(仮)である。

玉置 豊



CNN系列サイトの外国人記者がいた

このお茶会は「サラリーマン風の格好をしてきてね」というドレスコードがあったので、今年二回目のスーツを着てコスプレ気分で集合場所である株式会社アイ・ブロードキャストに遅刻気味で到着。

エレベーターのドアが開くと、背の高い外国の男性と、頭一つ分コンパクトな日本の女性が、なにやら英語で話していた。

あれ、場所を間違えたかな。


女性が「サドーサドー、リキューリキュー」といっているような気がする。

直接の知り合いが一人もいない状況の中、ちょっと距離をとって身長差のある二人の話に聞き耳を立てていると、どうやらこの女性が給湯流茶道の家元(仮)であることがわかった。

横で見守っていた給湯流の関係者に聞いたところ、なんでもこの男性はCNN系列サイトの記者で、この給湯流茶道を取材にきたらしい。イベントの取材でほかの媒体と一緒になることはよくあるけれど、CNN関係というのははじめてだ。

給湯室での茶道は確かに外国受けしそうなジャパニーズカルチャーだけど、失礼ながら給湯流茶道ってそんなにメジャーだったのかとちょっと驚いた(その記事はこちら)。家元(仮)は沢尻エリカクラスということか。


CNNの記者とDPZのライターが肩を並べました(物理的に)。日米七三分け対決。床屋さんにいってきた甲斐があるというものだ。

給湯室ではグラビア撮影会をやっていた

家元(仮)がインタビューに答えている間、給湯室では女性カメラマンによって、茶碗を持ったかわいいおねえさんの撮影がおこなわれていた。

給湯室でのグラビア、週刊SPA!あたりの特集ページでありそうな撮影である。茶道はどこへいった。


せっかくなので壁紙サイズの写真を用意しました。こちら

これは給湯流茶道のサイトの「Cute-ryu Girl's Collection」というコンテンツ用の撮影で、キュートな女性が給湯流茶道をしている様子を毎月掲載しているそうだ。

そう、キュートと給湯のダジャレである。

茶道っていうと敷居が高いイメージがあったのだが、この流派には親しみが持てそうだ。


お茶を入れるキュートな給湯流ガールは、撮影させていただいている株式会社アイ・ブロードキャストの社長秘書。社長秘書って実在するんですね。家元(仮)は別の会社でOLをやっているそうです。※ 写真/岸本咲子

給湯流茶道というのは、文字通り給湯室でOLやサラリーマンがおこなう茶道だそうで、給湯室だから普通の緑茶とかコーヒーでやるのかと思ったら、本格的に抹茶を入れているようだ。

なんで給湯室で正座をして、抹茶を飲まなきゃいけないんだと思いながら、ことの成行きを見守らせていただく。


外国人の記者が給湯室で正座をさせられている。エイプリルフールのウソ記事用の取材っぽいな。

社長秘書と私。この写真、来年の年賀状に使ったら怒られるだろうか。

で、給湯流茶道ってなに? >
 



の水曜日


 
給湯室でする現代版茶道

家元(仮)インタビュー

CNNの記者が首をひねりながら(気のせいだったらいいのですが)帰ったところで、実際に給湯室でのお茶会を体験する前に、会議室に場所を移して、取材が続いて気が大きくなっている家元(仮)にインタビュー。

ちなみに本日は当サイト編集部の石川さんに同行いただいた。


石川さんにもスーツで来てもらいました。

給湯流ってなんですか


 今日のお茶会がどんなものかわかっていなくて、お土産にミスドでドーナツ買ってきましたが、ちょっと違いましたね。まず基本的なところで、給湯流茶道とはどういうものなのでしょう。
家元(仮)全部がそうという訳ではありませんが、茶道っておばちゃんたちが着物着て、 「あなたその着物、どこで買ったの~」とかいいたいためにやっているイメージがありますよね。もちろん茶道を極めている偉大な方々もたくさんいらっしゃいますが。
 ありますねー。お金持ちじゃないとやらない、というか、できないイメージが。

「かならず儲かるチュニジアの金融商品がありましてですね~」とマダムを勧誘している訳ではない。

家元(仮)もともとは信長とかの戦国武将が、毎日の戦の合間に、 利休の狭い茶室にきて一服していたのが茶道なんです。だから今のようにおばさまがオホホといいながら飲むのは、ちょっと違うんじゃないかなと思うんですよ。
 本来の茶道と現代の茶道がずれてしまっていると。
家元(仮)そう考えると、この21世紀における戦国武将はサラリーマンとOLじゃないかなと。いつ下剋上やリストラされるかわからない、蹴落とされるかもしれない中で、毎日戦っているのは私達だ。だから現代の戦国武将に茶道を解放しようということではじめたんです!
 なるほど、現代社会で茶道を必要とするサラリーマンやOLのための茶道なんですね。

家元(仮)「抹茶はコーヒーよりもカフェインが多いから、会議の前に一杯飲むと、いつもよりおしゃべりになれるの。」

家元(仮)はじめたきっかけは、モーニングで連載中の「へうげもの」というお茶にまつわる男の戦国ロマンが描かれたマンガがあるのですけど、それが友人たちで流行っていたから。
 あ、話が急にライトになりましたね。
家元(仮)作法を解釈し直して、なにが一番利休がいいたかったことを私達が考える。利休が乗り移るくらいの気持ちです。
 利休、乗り移りますか。家元(仮)は、もともと茶道をやっていたのですか?
家元(仮)メンバーに一人、茶道を10年くらいちゃんとやっている人もいるんですけど、私も一度ちゃんと茶道を習ったほうがいいかなと思って、最近裏千家を習いに行っているんですよー。トラディショナル茶道業界では激しくペーペーです...。
 ...(三秒の間)...家元に(仮)がついている意味がわかったような気がします。

家元(仮)「茶道はオフィスラブにも効きますよ。たくさん抹茶を入れる濃茶(こいちゃ)は、恋茶と呼んでいます。」

給湯流の作法


家元(仮)利休は侘び寂びとかいって、狭い茶室でわざとやっていたのですが、それには意味があって、その時代は刀を持っていたけど、狭いと入れないからはずさせて入らせることで、全員を平等にあつかいます。

 ほうほうほう。
家元(仮)現在の戦国武将である我々にとっての刀は、IDカードなんです。なので、給湯室に入る前に必ずIDカードをはずして身分を忘れて入室します。
 上司と部下の関係を忘れてお茶をするわけですね。
家元(仮)普通のお茶会はお釜でお湯を沸かすんですけれど、お湯の注ぎ方は手の角度とか全部決まっています。給湯室でポットでやる場合も、いつロック解除ボタンを押したのかわからないような角度で、スっと美しく押すんです。
 そういうルールというか作法が給湯流にはあると。

家元(仮)「給湯流も15代くらい続くと給湯室のない時代になるから、わざわざ給湯室を復刻させる派と、今ある場所でやるべきだという派で、裏と表に分かれたりして。」

家元(仮)どんどん勝手に給湯流の作法をつくって、千利休をパロディにしてクスクスクスみたいな(悪い笑い方)。
 え、パロディっていっちゃっていいんですか。
家元(仮)いや、いわないほうがいいですね。まあパロディはパロディなんですよ。でもパロディっていっちゃうとダメですね。
 ですよねー。
家元(仮)はい、真剣です。逆に作法が今の時代に形骸化するとただのパロディになりますし、「IDカードをはずす」みたいに利休のスピリットをガチで受け継いでいる作法ならば本当の流派になると思っています。
 でもこういうことやっていて、本気でお茶をやっているひとから怒られませんか?
家元(仮)正直、毎日びくびくしています。でもアートとか利休が好きな人は「そうそう、そうなんだよ!」ってわりと共感して応援してくれるんですよ。「利休がいっていたことは現代でいうこれだよね!」って。
 それは心強いですね。
家元(仮)まあ超一部ですけど。
 ですよねー。

「石川くん!」「石川さん!」

こちらがなにを聞いても、熱くまじめに答えてくれる家元(仮)なのだが、聞けば聞くほど、給湯流というものが本気なのか冗談なのか、真剣なのかシャレなのかがわからなくなってくる。

そのあたりの受け取り方の難しさを、石川さんの行動で感じとっていただければ幸いだ。

「いつもどこまで本気なのかわからなくて怖いっていわれます。こんなに本気なのに!」

いや、やっぱりわかりませんって。


石川さんにドーナツ食べちゃえとそそのかした人(同行したライターのほそいさん)。

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給湯流のお茶会へ








給湯室でする現代版茶道

給湯室でのお茶会

給湯流茶道の在り方ががどんなものかをおぼろげながら理解したところで、給湯室に戻って実際にお茶会を体験させていただく。

さっきの社長秘書がお茶を入れてくれるのかとドキドキしたのだが、彼女はもう仕事に戻ってしまったそうで、家元(仮)みずからのお手によるお茶だって。とかいったらダメですね。

いやー、光栄でーす。


素材集っぽい写真です。タイトル:「部長のカツラ見たー?」

まずはお菓子をいただく

奥から私、石川、ほそいの順で、給湯室の限られたスペースに無理やり三人並んで正座をする。給湯室が狭いのではなくて、三人で正座をしようとするから狭いのだが。狭いけれど、子供のころに隠れた押し入れの中みたいに居心地はいい。

お茶会というのは、お菓子とお茶を同時に楽しむのではなく、最初に甘いお菓子を食べてから、そのあとに苦いお茶を飲むものなのだそうで、給湯流でも最初にお菓子がでてきた。


夜のお茶会は、うなぎパイが定番だそうです。会社だと出張土産でよくありそうだ。

トラディショナルな茶道では、懐紙という紙にお菓子をのせるそうだが、会社員の懐にある紙といえば名刺。

自分の名刺にお菓子を乗せていただくのが給湯流の作法だそうだ。こうすると次に会った人にうなぎパイのカスがついたざらつく名刺を渡すことになりそうなので、ビジネスマナーとしては微妙かもしれない。


給湯流茶道では、うなぎパイを名刺の上に乗せて食べることがルールなのです。(CNN風キャプション)

ちなみに同行いただいたほそいさんは、高校時代に茶道の授業を受けていたそうで、そのときのエピソードを一つ教えてもらった。

「茶道自体は好きだったんですけれど、それを教えるおばさんがすごい苦手で、放課後に一回、誰もいない茶室に忍び込んで、でんぐり返りしてやりましたよ!」

だそうです。


うなぎパイっておいしいですよね。

ここまでで私が思ったことは、「うなぎパイはお茶と一緒に飲みたい」ということである。もちろん日本料理のコースも、ご飯を最期じゃなくて先に出してほしい派だ。

家元(仮)に、なぜお茶はお菓子を食べ終わってからなんですかと聞いてみたら、

「茶道ではお客様がお菓子を食べてる間に、同じ茶室で亭主がお茶をいれます。亭主の一連の所作の美しさや抹茶をかきまぜる音などをお客様がもぐもぐしながら楽しむ、というのがトラディッショナル茶道の考えみたいです。」

とのことだった。すみません、久々に食べるうなぎパイに夢中になっていて、亭主(家元(仮))をぜんぜん見ていませんでした。






給湯室でする現代版茶道

給湯流にとっての「侘(わび)」

うなぎパイに口の中の水分を吸い取られたところで、恐れ多くも家元(仮)に入れていただいたお抹茶をいただく。

ここで重要になるのが茶碗である。

利休は朝鮮の庶民が使ってボロボロになった茶碗や、漁師が魚を捕るのに使ってボロボロになった籠などを、「侘びてる!」と珍重し、それを見た秀吉が「これが最新のモードなのか!」と焦ったそうだ(って家元(仮)がいっている)。

この話を超解釈した結果、給湯流で侘びているとされている茶碗がこれだ。


後輩の実家にあったちびまる子ちゃんの茶碗。

そして赤胴鈴之助。こんな顔だったっけ?

どこの実家にも一つは眠っていそうな、価値があるんだかないんだかわからない茶碗に対して、「侘びてる!」を連発する家元(仮)。

この人、やっぱり茶道で遊んでいるだけなのかもしれない。

家元(仮)にいわせると、ベストジーニスト賞をとりがちなタレントなどが、ボロボロの古いジーパンを何十万も出して買う思考回路の発祥は、この利休の教えなのだそうだ。


でも私には普通の茶碗がまわってきた。侘びているのか、いないのか。

お茶を三回半ですする

お茶会では、お茶を入れる亭主が、一番前に座る正客に対して、どれだけいい茶碗でサーブしているのかを自慢したりするものらしい。

「この絵が表になりますから、これが前にくるように回して...」と、もっともらしいことを家元(仮)が教えてくれるが、その手に持つ茶碗の絵はちびまる子ちゃん。


「15年前のまる子椀ですか。なかなか侘びた茶碗どすなあ。」

家元(仮)が京都の茶会(本物の方)に稽古でいったら、美術館から借りてきた高価な茶碗と、稽古用の安い茶碗が並んでいてたそうで、それを知らない家元(仮)が花柄の茶碗を手に持って、「この茶碗かわいいですね」っていったら、「それ、稽古用どすー」ていわれて、さらに「あなたももっと目を磨かないとだめどすねー」とダメ押しされたそうだ。京都怖い。

そういうものに対する反発心が、家元(仮)をここまで本気にさせているのかもしれない。

いや本気なのかがよくわからない人なのだけど。


左手を下に置いて茶碗を持ち、いわれるがままに三回半でズズズと抹茶を飲み干す。そろそろ足が痛い。

ZOOっとお茶をすすりながらのチューチュートレイン。

家元(仮)が目指すもの

茶道をやったことのなかった家元(仮)が、漫画を読んで給湯流茶道を始めたのはいいとして、最終的になにを目指しているのだろう。

「給湯流のコンサル事業を始めようと思っているんです。給湯だけに910円で。ガチで。ゆくゆくは全国のOLちゃんが各給湯室支部になって、私がコンサルにいくと、「ああ、家元さん!」みたいな。もえー。でも誰からも申し込みがなくて、つらいなって。」

最後までどこまで本気なのかわからない人だった。ちなみに家元(仮)から(仮)がとれるのは、タモリ倶楽部に出演したときだそうだ。

せっかくスーツを着たので、サラリーマン気分で飲み会をしてみた。


 


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