給湯流茶道

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朝日新聞デジタルに掲載されました

朝日新聞デジタルに取材していただきました!
http://dot.asahi.com/dot/2016030900187.html




20160313朝日新聞デジタル.JPG



以下、転載==========

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ギャグ?本気? 給湯室でお茶を点てる"給湯流茶道"の奥深い世界

   
松岡宏大dot.

給湯室の前で茶を点てる谷田半休家元(仮)(撮影/奥村智載)

給湯室の前で茶を点てる谷田半休家元(仮)
(撮影/奥村智載)

 給湯流茶道をご存じだろうか。会社の廊下の隅っこにある給湯室を茶室に見立て抹茶を点てる、それが給湯流だ。

給湯流家元(仮)と称するのが谷田半休。世を忍ぶ仮の姿はOLである。

「茶道は戦国時代の武将の間で広がっていったものですが、現代社会において、いつリストラにあうかわからないOLやサラリーマンは戦国武将に似ていると思うんです。武将たちが戦の間に茶を点てていたように、仕事の合間にOLやサラリーマンに茶を点てたい。それが給湯流のコンセプトです」

 しかし、よりによってなぜ給湯室という暗くて狭い場所でなくてはならないのか。

「千利休が建てた『待庵』という茶室が京都にあります。この広さが2畳。ちょうど会社の給湯室と同じくらいの狭さだと気付いたんです。そこで、社内でお茶をやっている同僚を誘い、茶道具を持ち寄って給湯室で抹茶を点ててみました。そのときメンバーの口からポロッと出たのが『これって給湯流ですね!』という言葉。以来、給湯流を名乗るようになりました」





給湯室の前で茶を点てる谷田半休家元(仮)(撮影/奥村智載)

給湯室の前で茶を点てる谷田半休家元(仮)
(撮影/奥村智載)

 給湯流は茶道具も独創的だ。骨董(こっとう)市で買ったアニメキャラのご飯茶わんや旅先で手に入れたスナックの湯飲み。掛け軸の代わりに飾られるのはなつかしのレコードジャケット。お菓子は出張先の土産として買ってきた瓦せんべいやまんじゅうなどが喜ばれる。

「お茶の世界には『見立て』といって、茶会のために作られてないものを茶道具に転用して楽しむ文化があるのですが、そういうイメージですね。たとえば給湯流では懐紙(着物の懐にいれておく紙で、菓子をとりわけたり、茶わんをふいたりするために使用)に見立てて名刺を使います。これは自分の肩書の上にお菓子を置いてしまおうというメッセージで、茶席では地位や身分の上下はないという千利休たちがかかげたコンセプトを現代版にアップデートした『見立て』です」

 そして、なによりこの茶席を盛り上げるのが家元(仮)谷田半休のトークだ。むしろ、これは茶席ではなくトークショーじゃないのかと疑ってしまうほど、そのトークの質は高い。狭い給湯室で繰り広げられる、未体験の不思議な茶席の雰囲気に飲み込まれ、給湯流茶道にハマる人が続出している。





給湯室の前で茶を点てる谷田半休家元(仮)(撮影/奥村智載)

給湯室の前で茶を点てる谷田半休家元(仮)
(撮影/奥村智載)

 ときには企業に頼まれ、福利厚生の一環として社内で一席設けることもあるという。また、2カ月に1度くらいのペースでイベントや茶席を開催しており、3月21日には、東京・御徒町で狂言とのコラボ企画「御徒町の宝石商がつむいできたエピソードを狂言にしてみた!茶会」が開催される予定だ。

 給湯流の目指すところはどこなのだろうか?

「給湯流の最終目標は、ジャニーズ事務所の給湯室でお茶を点てることです(笑)」

 全てがギャグのようだが、お茶の効用にもちゃんと注目している。

「たとえば社内の会議でイライラしているとき、お茶を飲むと『ま、いっか』という気分になったりしませんか? お茶の葉にはカフェインだけでなく、食物繊維やビタミンCも含まれている。さらにテアニンという物質がありまして、これが精神をリラックスさせるんです。目も覚めるけど、ホッとする。抹茶はキセキの飲み物なんです」

 なるほど、給湯流。仕事に疲れたときは、エナジードリンクを飲むのではなく、給湯室で抹茶を一服いただいてみるのも一興かもしれない。(文・松岡宏大)



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