給湯流茶道

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【茶会レポート】世田谷ものづくり学校にて、廃校中学・廊下で侘び茶会!

下克上の戦国武将たちを支えた茶道を、現代の「戦場(=ビジネス)」で再現するとこうなった



給湯流茶道では、初心者向け日本文化レクチャーと茶会体験ができる「給湯流ワビサビジネススクール」を開催しています。

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▲過去の「給湯流茶道ワビサビジネススクール」私服で能面をかぶってみるワークショップ

ワイン片手に外国人が「日本の文化オシエテヨ」と近寄ってきたときでも、さらっと返せるクールなビジネスパーソンの育成を目指しています!(大マジメ)

2014年秋に開催した「給湯流茶道ワビサビジネススクール」では、若手お坊さんによる禅宗レクチャーと茶会を行いました。その際、茶室に見立てた場所は、なんと廃校になった中学校! 階段の踊り場にヨガマットをしき茶室完成。センコーに反抗して悪さしたり、片思いの相手に告白したり、中学生の戦いの場であったはずの踊り場。中学生の「戦場」であり、妙齢OLにとってはノスタルジーな空間です。

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ちなみに、利休がいたころはノスタルジーな茶室が流行ったという説もあります。利休の時代、ヨーロッパや東南アジアと貿易をして大儲けしていた豪商たちが、最先端でアーバンな貿易港でわざと田舎風の茶室を作ったそうです。

一見素朴に見える土壁むき出しで藁吹きの屋根のノスタルジー小屋が大流行。現代の感覚でいえば、ガツガツかせぐグローバル金融マンが、週末は畑仕事に精を出しちゃうってなところでしょうか? 普段はバリバリとビジネスで戦っている大人たちが、昔懐かしい中学校の廊下で茶会をやることは、じつのところ茶道の理に適ってるかも!

...おっと!茶道史が好きすぎてうっかり白熱してしまいました。話を戻して、茶会レポートに戻ります。

茶室は聖域。商人だった利休も関白だった秀吉も、茶室の中では平等と考えられていました。茶室の入り口をわざと狭くし、武士は彼らのアイデンティティーである刀をはずさないと茶室に入れません。給湯流茶道でも、茶室と見立てた給湯室の前で靴を脱ぎ、ビジネスマンのアイデンティティーであるところの社名入りIDカードを首から外す作法があります!

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写真/奥村智範

さあ!ついに茶会の始まりです。

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この写真はお菓子の説明をしているところです。茶道では、先に甘いお菓子を食べてから苦い抹茶をおいしくいただくという流れがあります。伝統的な茶会ではいろどり豊かな和菓子がでてきますが、給湯流茶道では出張先や有休で出かけた旅行先で見つけた職場へのお土産的なお菓子を出すことが多いです。

茶道のキーワードに「一期一会」という言葉があります。そのときそのときにしか手に入らなかったものをお客さんに出す、ちょっと刹那的な感じが、戦国武将や今のビジネスマンにあってるかなと思います。ちなみに今回の茶会お菓子は...

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京都「晴明神社」おせんべいです。関西出張の帰りに立ち寄りました。この神社に祭られているのは安倍晴明。天文学に詳しく、天皇や貴族などVIPたちの占いや予言もあたりまくり、現代でいえば、ビッグデータをもとに会社経営陣に指示出しまくりなコンサルいったところでしょうか?

おせんべいに真っ赤な星マークがバーンと印刷されてる勢いに、私にもVIPがクライアントになるようなビジネスチャンスがほしい!とあやかりたくなり買いました。お客さんたち、そんな話を聞きながらボリボリ...。

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お菓子を食べ終わったら、ついに抹茶の時間です。茶道のなかで「ご自服(じふく)」というお茶の飲み方があります。自分で自分のために一服たてることです。給湯流茶道ではこの「ご自服」を推奨しております。職場でも大事なプレゼンや会議などの「出陣」前に、カッと抹茶を一服。抹茶はカフェインだけでなく食物繊維やビタミンも豊富で、戦うあなたをサポートします(モミ手)。

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シャカシャカシャカ!

中学校の廊下に突如なりひびくシャカシャカの応酬。現在の茶道ではたくさんの作法があり、一つずつ覚えていく「習いごと」の要素が強いです。しかし、抹茶を入れるところだけにフォーカスすると、原理はインスタントコーヒーと同じ! 粉がお湯に溶ければおいしくいただけます。難しいことは考えず、まずはシャカシャカと参りましょう。

職場でデータ作成がこんがらがってうんざり!といったときも、給湯室でシャカシャカするとなんだか目が覚めリセットできます。

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ぐいっ!ずずっ!

給湯室で一服飲んだ後輩社員(男性)は、「抹茶の苦味はコーヒーとは違う深さがあって、会議でしゃべり倒して疲れた舌をほぐしてくれる気がする」と言っていました。外回り営業で疲れた舌も、スカイプ会議で疲れた舌も、ぜひみなさん抹茶で回復してくだされ!


抹茶を飲み終わると、亭主(茶会を企画した人)が茶会のテーマとして床の間にかかっている掛け軸や、テーマに合わせてどんな茶碗を用意したのかを話し始めます。中学校の廊下には当然床の間もないので、この茶室でいろいろなものを茶道具に見立てます。今回の掛け軸はこれ!

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太平洋戦争が起きたころ発売されていたアメリカの雑誌『LIFE』です。勤続●年で会社に休みをもらって旅行したアメリカ・ポートランドの古道具ショッピングモールで買いました。表紙の写真は"Japanese soldiers"...このときの茶会では、「理不尽に鈍感になる修行」として、立ったまま禅をする予定になっていたので、この雑誌を選びました。(その様子も後日レポートします)

ちなみに、茶道では「見立て」というおもしろいルールがあります。茶道のために作られた道具だけでなく、関係ないものを茶道具に見立てお客さんを驚かせるというゲーム性をもつ「見立て」。この掛け軸も「見立て」のひとつ。

茶会では、どんな茶碗がでてくるかをお客さんはいちばん楽しみにしています。みんなが抹茶を飲み終わると、茶碗を回覧したりします。給湯流茶道究極?の見立て茶碗のジャンルに、アニメごはん茶碗ってのがあります!

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写真(右)モギヨシコ

左は給湯流茶会常連のお客様が自ら持ち込んだアニメ孫悟空茶碗! 右は、給湯流茶会でよく出す、引退した力士のマグカップです。こちら亡くなった祖父が力士の後援会をやっており高校生の時に私にくれたものです。通学前に毎日牛乳を飲んでた思ひ出のマグカップ!

室町時代はおもに中国のきれいな茶碗で茶会が行われていましたが、戦国時代になると「井戸茶碗」とよばれるボロボロの茶碗が出回りました。一説によると、朝鮮の庶民のかたがご飯を食べるときに使っていた茶碗だそうで、粗悪な土を使っていてゆがんだり欠けていたりしています。室町時代から盛り上がり始めた、不完全なものや貧しいもののほうがおもしろいと考える「わびさび」精神や、利休の最先端アート的な茶会に気後れしてた秀吉が農村ノスタルジーで好んだことで「井戸茶碗」が大流行したという説があります。今でいうところのダメージジーンズ的なものかも?

誰が勝つかわからない戦国時代、パンクなものが流行ったのかもしれません。というわけで給湯流茶道では現代の井戸茶碗として、自分が子どものころ使っていたようなアニメ茶碗を推奨しています。

身の回りの物を茶道具に見立てまくれば、あなたもすぐできる給湯流茶道!

茶道が好きすぎて、ついつい熱く長々とレポートしてしまいました。しかし、言いたいことはただひとつ。抹茶用の茶碗がなくたって、豪華な床の間がなくなって、あなたが売り上げや締め切りや競合、世間...何かと戦う人間であれば、戦場を茶室に見立て茶道を楽しむ権利がある! 正座が苦手であれば立って茶会をしたっていいんです。

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立ってるのに疲れたら、椅子に正座もOK!

戦国時代、不安定な職場で諸行無常のなかを駆け抜けた武将たちに思いをはせながら今日もなんとかのりきりましょう

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(文/谷田半休・給湯流茶道家元(仮) 写真(無記名のものすべて)/奥村智範)

index Photo by (左)中村スタジオ/(右)福羅広幸.

掲載元/lifehacker



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